強気な彼から逃げられません
そして、ほんの少しだけ怜さんの素性を知ってほっとしたせいか、私の中には落ち着きも出てきて、怜さんの強い視線の中にある不安定な光を感じた。
きっと、嘘は言ってない。
怜さんが私を見ていてくれていたのも、私を気に入ってくれているのも本当なんだろう。
そうでなければ、今まさに私がどう言葉を返すのかをここまで必死で待つことはないだろう。
「なあ。俺と付き合いながら、好きになってもらえないか?」
言葉を返せない私に、怜さんは呟いた。
「今すぐ俺と同じ気持ちになってくれとは言わない。それに、嫌なら無理強いはしない。もう、これ以上困らせるようなことはしないって誓うけど。
少しでも俺に興味が持てたなら、付き合ってくれないか?」
「でも……。それじゃ、」
ちゃんと怜さんを好きになれるのかもわからないのに、申し訳ないし、私にそれほどの価値があるとも思えない。
どう見ても、どう考えても、怜さんの周囲には綺麗な女性がたくさんいそうだし。
もてるという軽い言葉では処理できないほど、魅力を振りまいていそうだし。
そしてなにより。
「そのうち、私のような魅力のない女への興味は消えちゃうに決まってます」
怜さんに向けた、どこか自嘲気味に聞こえる私の言葉は、思った以上に自分自身を傷つけた。