強気な彼から逃げられません
そんな様子を隣で見つつ、私には先輩の言葉が今でも信じられずにいた。
元来自分は生真面目な性格だと、自他ともに認めている私には、受付という職場で男をゲットするなんてこと、倫理に反してるんじゃないかと思ってしまうし、私には無理だ。
ただでさえ、日々の業務をこなすだけで必死なのに、更に
『いいオトコをゲットする』
なんて器用な事ができるわけがない。
黙り込んで俯く私に、先輩は。
「深刻な顔をして悩むほどの事でもないでしょ? いいオトコなんて、ここに来られるお客様以外にたくさんいるんだから。 別に無理して頑張る必要なんて、ないし」
くすくすと笑った。
綺麗な肌が印象的な横顔は、大人の余裕に満ちていてる。
愛する人と結婚した安定感から生まれる艶やかさも見えて、同性から見てもほれぼれしてしまう。
仕事も完璧で、結婚という幸せも手に入れた無敵のこの女性がうらやましく思える。
今までは、結婚なんて自分からは遠いものだとしか思えなくて実感もなかったけれど、隣で幸せを隠さない先輩を見ていると、知らず知らずその幸せのオーラに感化されてしまいそうだ。
そんな事をぼんやりと考えていると、先輩はにっこりと笑みを浮かべて呟いた。
「でも、敢えて言わせてもらえば」
「え? な、なんですか?」
何か企んでいそうな先輩の表情に不安を覚えつつ視線を合わせた。