強気な彼から逃げられません
私がこれまで経験した恋愛は、全て私が相手の事を好きになりすぎて、相手の重荷にしかならない私は振られて終わるパターンばかりだった。
怜さんは、そんな私の過去に妬いているようだったし、簡単には私から離れないと言ってくれているけれど。
まだまだ手探りの恋愛らしきものを始めたばかり。
志菜子ちゃんにも先輩にも、はっきりとした言葉は返せない。
そして、志菜子ちゃんが怜さんを気に入っているのなら、頑張ってもいいよ、と言うべきなのかもしれないけれど、それはどうしても言えなくて。
私の気持ちは、とっくに怜さんへと向かっているのかもしれない。
「お先に失礼します」
大きな声で言うが早いか、私はさっさと更衣室をあとにした。
背中越しに聞える志菜子ちゃんの声は聞こえないふり。
ちょうど待っていたエレベーターに乗り込んで一階に降りると、ふと目に入った人影。
ロビーの柱にもたれていた怜さんが
「お疲れ」
と言って手を上げた。
「え、怜さん……?」