強気な彼から逃げられません



体を起こして私に向かって歩いてくる怜さんに驚いていると。

「制服も似合っていたけど、やっぱりミニスカートはぐっとくるな。 好きな女なら尚更」

怜さんは私の目の前に立ち、小さく笑った。

「晩ご飯、食べに行こう。このあたりでいい店ある?」

まるで私との待ち合わせは当たり前だとでもいうような口調で軽やかに言った。

そして、それすら自然な事のように私の手を取ると、その手にぐっと力を込めて歩きだした。

怜さんに引っ張られ、ロビーを横切って会社から出る途中ですれ違う女の子たちからの怪訝そうな瞳からは、怜さんへの好意に似た気持ちと私に対する厳しい感情が見え隠れ。

露骨ではないけれど、怜さんの見た目に惹きつけられながら目が離せない女の子たち。

男性の中にも怜さんをちらりと見て悔しげな表情を見せる人もいる。

そうだよね、男性だって、恰好いい同性を見るとやっぱり悔しいものなんだろう。

「この前、芹花を駅でかっさらっただろ? あの時はこの近所でたまたま飲んでたんだけど。 芹花は普段どこで飲んだり食べたりしてるんだ?」

社内の人たちからの視線から逃れて、ようやく会社から出た途端、怜さんが話しかけてきた。

相変わらず私の手を繋いだまま、離す様子なんてまるでない。


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