強気な彼から逃げられません
まだまだ恋人同士だというわけではない、微妙な立ち位置の二人なのに、手を繋ぐ意味がわからない。
でも、とっくにいい大人の私達が手を繋ぐことでうるさくその意味を問うなんて、怜さんには面倒くさい事なのかな。
大人なら大人らしく、手くらい繋いでも堂々とそれを受け入れればいいんだろうけど。
これまでの私の恋愛経験を振り返ると、私の思いは急速に右肩上がりに盛り上がるから。
単に手を繋ぐだけじゃ、私の気持ちは済まなくなりそうで、それが怖い。
好きになってしまったら、かなりの集中力と、時間を費やして相手に尽くしてしまう私だから。
ほんの少し寂しいくらいで気持ちを落ち着かせたまま、相手の重荷にならない程度で様子を見た方がいい。
それがわかっているから、やっぱり。
「うん。あんな風に手を繋ぐのってちょっと……嫌、かな」
俯いて、小さな声でそう呟いた。
その声が、私の中の
『恋人なら、いつも手を繋いで仲良くしたい。そして、もっともっと気持ちをぶつけたい』
という本来の恋愛への姿勢を隠してくれたらいいのに、と思いながら。
すると、怜さんは再び私の左手を取ると、
「悪い悪い、こっちの方が芹花のお気に入りだったりする?」
私の指と怜さんの指をからめ合わせて、さっきよりも強い力でぐっと握ってくれた。
「恋人つなぎの方が、いいよな、やっぱり。気づかなくて悪かったな。 俺も、このつなぎ方の方がしっくりくる」
怜さんは、 二人で恋人つなぎをしている手を満足げに見ながら、小さく頷いていた。