強気な彼から逃げられません
にっこりと笑った顔は、本当にそれが嬉しそうで、私の手をずっと離さないぞ、とでもいうような強い気持ちも見て取れる。
「さ、どこに食べに行こうか。 法務部との打ち合わせの後、芹花を待ってる間も腹が減って仕方がなかったんだ」
怜さんと、そんな約束をした覚えはないのに、私と食事に行くことが当たり前のような、自然なような。
私に疑問の言葉すら言わせないような流れの中で、手を繋ぎ、駅に向かって歩き出した。
怜さんの横に並んで歩きながら、恋人繋ぎをしている二人の手をちらちらと見て。
そのたびに私の気持ちはぽっと温かくなって、歩みも軽くなる。
単純だな、私。
「駅の近くに野菜料理がおいしいお店があるけど、どうかな?」
「ん、そこでいいっていうか、腹が減ってるからどこでもいい」
「じゃあ、そこで食べようか。日本酒も結構揃ってるよ」
私の言葉に大きく笑った怜さんの表情は、どこかほっとしたように見えた。