強気な彼から逃げられません


「そこそこ女には声をかけられる人生送ってきたのに、そんな事関係なかったって自信喪失。 会う度気持ち持ってかれるのに、お前は全く……」

ぶつぶつ言う怜さんは、そんな自分がおかしくなったのか、不意に言葉を止めて、ははっと苦笑した。

「まあ、いいか。今こうして芹花が目の前にいて、俺の言葉に一喜一憂してるだけで全て許せる。ようやく俺を意識して緊張するまでになったんだからな」

「一喜一憂……って。えっと……」

不満げな言葉だけど、どこか満足げな怜さん。

私をじっと見つめながら、そっとその手を私の手に乗せた。

今までビールグラスを持っていたせいか、その手は冷たくて、熱くなっていた私の手をすっと冷やしてくれて、気持ちがいい。

「俺、好きになったら気持ちを抑えられないんだ。そんな俺が今まで芹花を見てるだけだったのは、まあ仕事に影響が出るのもまずいって思ってたし、芹花に恋人がいるって思ってたからな」

「は……?」

私に恋人?

どうしてそんな事を思っていたんだろう?

そんな私の疑問に気付いているのか、怜さんは小さく笑って。

「ここの指輪。いつのまにかなくなってた」

私の手に置かれた怜さんの指先が、私の右手の薬指をそっとなぞった。

「ここに輝いてたルビーの指輪がいつの間にか消えてた。ああ、恋人と別れたんだなって心でガッツポーズした」

怜さんになぞられて動かせない私の右手。


< 41 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop