強気な彼から逃げられません
「そこそこ女には声をかけられる人生送ってきたのに、そんな事関係なかったって自信喪失。 会う度気持ち持ってかれるのに、お前は全く……」
ぶつぶつ言う怜さんは、そんな自分がおかしくなったのか、不意に言葉を止めて、ははっと苦笑した。
「まあ、いいか。今こうして芹花が目の前にいて、俺の言葉に一喜一憂してるだけで全て許せる。ようやく俺を意識して緊張するまでになったんだからな」
「一喜一憂……って。えっと……」
不満げな言葉だけど、どこか満足げな怜さん。
私をじっと見つめながら、そっとその手を私の手に乗せた。
今までビールグラスを持っていたせいか、その手は冷たくて、熱くなっていた私の手をすっと冷やしてくれて、気持ちがいい。
「俺、好きになったら気持ちを抑えられないんだ。そんな俺が今まで芹花を見てるだけだったのは、まあ仕事に影響が出るのもまずいって思ってたし、芹花に恋人がいるって思ってたからな」
「は……?」
私に恋人?
どうしてそんな事を思っていたんだろう?
そんな私の疑問に気付いているのか、怜さんは小さく笑って。
「ここの指輪。いつのまにかなくなってた」
私の手に置かれた怜さんの指先が、私の右手の薬指をそっとなぞった。
「ここに輝いてたルビーの指輪がいつの間にか消えてた。ああ、恋人と別れたんだなって心でガッツポーズした」
怜さんになぞられて動かせない私の右手。