強気な彼から逃げられません



確かにそこには恋人からもらった指輪が光っていたけれど、別れた時に外して捨てた。

恋人が私の誕生日に用意してくれて以来、大切に身に着けていたけれど、その輝きを残したまま、彼は他の女性へと気持ちを移した。

『俺に夢中になりすぎるお前が重くなった』

そんな悲しい言葉を置き土産に背を向けられて、その時の私は崩れてしまいそうになるほどぼろぼろになった。

「もう、俺のものにするって決めて、どう攻め落とすか考えてる時に駅で偶然芹花を見かけて。で、今俺の前にお前はいるんだ。
もう、絶対手に入れるって決めてるし、こうして俺の言葉に右往左往してる芹花の心は俺の事しか考えられないだろ?」

「……っ」

私の心を満たす温かさはきっと、怜さんが私に与えてくれる言葉の甘さだ。

何のためらいも見せず、まっすぐに私に気持ちを向けてくれる熱は、私を包み込んで、逃がしてくれない。

今、怜さんが私を求め、欲しがってくれていると、わかりすぎるくらいにわかる。

大切だと、愛しいと。

そう思った途端気持ちを抑えられなくなって、手に入れたいと思ってしまうのは恋愛の醍醐味だ。

いつもその体温を感じたままでいたいと、そう思うのも自然な流れだ。

「わ、私は……」

自分から感情をぶつける事には慣れているけれど、ぶつけられるのには慣れていなくて。

頭の中で言葉がうまくまとまらない。

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