強気な彼から逃げられません
「私、怜さんを……このまま好きになっても……」
好きになってもいいのかな。
一緒にいたいって思う気持ちを素直に見せてもいいのかな……。
怜さんの視線の強さに圧倒されながらも、これまで経験した悲しみを忘れられない私は、上手に彼の思いに応えらえずにいた。
一度好きになってしまったら、私は、自分の気持ちを相手に向けて、なんの駆け引きもなく、ただただ一緒にいたいと願うだけの、どうしようもないオンナになる。
大好きで大好きでどうしようもなくて、生活の基準は恋人との時間になる。
そして、いつの間にか捨てられる。
それを何度経験しても、学習能力がなかったのか、私はいつも泣き崩れてだめになる。
もう、あんなつらい思いはしたくない。
「私、怜さんを好きになったらきっと……もう、どうしようもなくなるってわかるから」
だから、好きになるのが怖い。
怜さんに捨てられる未来を想像するだけで、切なくて悲しくて、体中が痛い。
「ふん。どうしようもなくなるほど、好きにさせてやるって決めてるから。 安心してだめになれ。生活の全てが俺でいっぱいになるくらいに大切にしてやる。
だから、俺を好きになれ」
ぐっと力が込められた右手。
その力から注がれる痛みは、とても甘くて熱っぽい。