強気な彼から逃げられません
「怜さんには怜さんの考えがあるから、好きなように決めていけば……いいと思う」
どうにか視線を上げて笑った。
怜さんが私を気に入ってくれて、私も怜さんのその気持ちに応えようと思ってはいるけれど、やっぱり簡単には遠慮という感覚を捨てるなんてできないし、飛び込む勇気もまだない。
「俺、芹花が何をどう言っても、自分の考えはある程度変えないと思う。もういい大人なんだから、それは誰でもそうだろ。だから、芹花も自分の考えがあれば言って欲しいし、俺に望む事があれば、言って欲しいんだけど?」
「あ……うん……」
「芹花の気持ちと俺の気持ちがかみ合えば一番だけど、そうじゃなくても俺はきっと芹花が好きだから、安心してなんでも言ってくれ……な?」
「……わかった」
怜さんの優しい声に包まれて、私の気持ちが緩んでいくのを感じる。
肩に置かれている怜さんの手も、更に熱くなったように思えて、そのまま体を怜さんに預けた。
すると、私の耳元に怜さんの言葉が落とされる。
「俺には俺の考えがあるから好きなように決めていいって、さっきそう言ったよな」
「あ……うん」
「それって、今まで付き合ってきた女に、俺が求めていた事なんだよな」
……やっぱり、そうなんだ。
怜さんに限らず、男の人は、自分の事を女に左右される事を嫌うってなんとなくわかってたから。
それがわかっているのに、私が必要以上に懐の中に飛び込もうとして敬遠されたこともあった。
怜さんも、私からしつこく意見されるのを嫌うのなら、私はそれを肝に銘じて、怜さんの私生活には立ち入らないようにしよう。