強気な彼から逃げられません
「変わるもんだな。俺、芹花には、俺の事を気にかけて欲しいし俺の生活に関わってほしいって思うんだ」
「私に……?」
「そう。これまでの彼女が俺の事をあれこれ気にかけたり意見したりしてくると、正直面倒だったんだ。
だから、敢えて距離をとったり仕事を理由に会う回数を減らしたり」
言いづらそうに話す怜さんは、その話を私がどう受け止めるのかを気にしているかのように私の顔を見つめている。
ゆっくりと近づく怜さんの顔には、不安と心細さが見え隠れしていて、とても大切な事を話してくれているのかもしれないと、気づく。
「俺の事を気にかけて欲しい。なんでも言って欲しい。それに、俺一人だけの芹花になって欲しい」
「怜さん……」
「今までみたいに適当に付き合って、自分自身の時間を最優先させるような関係にはしたくない。
お互いをがんじがらめにしながら、密な距離で芹花を俺の側に置いておきたいんだ」
「密な距離……」
それは、これまで私が求めてやまなかった関係だ。
恋人との適度な距離感なんて欲しくない。
生活の全てを共有したいし、私は恋人に優しさと愛情を存分に注いで。
同じだけのものを、恋人から返してもらいたい。
それを、『密な距離』だと思っていいのなら。
私は怜さんと、自分が求めてやまない関係を築く事ができるんだろうか……。
それとも、私の気持ちの方が重すぎて、怜さんには『やっぱり違う』と飽きられるんだろうか。