強気な彼から逃げられません
「気にならないの?」
そんな怜さんに違和感を覚えて、思わず口にしていた。
私を気に入っているのなら、そんな笑顔なんて浮かべずに、嫉妬まじりの言葉を落として欲しいと、そう思う私の感情は、自然なものだと思う。
怜さんは、ほんの少し拗ねた私の声に、くすりと笑った。
「気にして欲しいのか? で、妬いて欲しい?」
再び私を抱き寄せて、どこか弾んだ声をあげた。
「もちろん、芹花の以前のオトコに妬いてるし、気になって仕方がない。
あれだけ幸せそうな顔で電話で話してたり、もらった指輪を毎日ちゃんとはめて仕事をしてるなんてよっぽど恋人を愛していたんだろうって思うと悔しいし」
「あ……そ、そうなんだ」
「そう。俺は、芹花をあんなに幸せそうな顔にできる恋人が羨ましかったな。 恋人の事を芹花全体で愛してるって空気が満ちてたし、それだけ想われてる恋人を妬んだりもした。
だから、俺が芹花の恋人になれたら、俺も存分に愛されたいし、あんな幸せな顔で毎日を過ごさせてやりたいって思ってるんだ」
「愛されたいの? ……私の愛し方は、重いよ? 他の人なんて全然目に入らなくなるし、必死で怜さんを求めてしまうよ」
優しく気持ちを吐露してくれる怜さんの言葉が私の体全部に染み入ってくる。
これまでの時間、私は怜さんの存在を知らないまま過ごしていたけれど、その間も怜さんは私の事を見つめていてくれた。
そんな過去の事実だけで目の奥が熱くなるけれど、そんな私の恋愛の仕方を拒むわけでなく、羨ましいとも言ってくれた。
怜さんの言葉を聞くのが怖い。