強気な彼から逃げられません
「俺は、芹花がこれまで一生懸命に恋人を想って、愛して、気持ちも体も……まあ、むかつくけど、全てを恋人の為に向けてきたものと同じように愛して欲しいとは思ってない」
「うん……わかってる。やっぱり、面倒だよね……」
「は? 面倒?」
私の言葉にかぶせるような怜さんの声に、何だか違和感を覚えた。
「俺、面倒なんて、言ったか?」
くすくす笑うような声には、私に呆れているニュアンスも感じて、更に違和感。
「れ、怜さん……?」
「俺は、芹花が昔の恋人に向けていた気持ちと同じものは求めていないって言ったんだけど? 面倒なんて言ったか?」
腰を落とし、お互いの視線の高さを合わせてくれた怜さんは、ごつんと額と額をぶつけたあと
「昔の恋人なんて、比べ物にならないほどに、もっと強い気持ちが欲しい。 今までと同じ気持ちじゃ満足できない。
芹花が俺の事しか考えられない毎日を、そしてそれが幸せで仕方がないっていう気持ちをそのまま俺にくれ」
「れ、怜さん……」
あまりにも近い距離にいる怜さん。
吐息交じりの言葉は予想外すぎて、どう受け止めていいのか、そして信じていいのか、すぐにはわからない。