強気な彼から逃げられません
相変わらずお互いの額はくっついていて、体温を分け合いながらも、怜さんの唇は意地悪なままだ。
「これまでの恋人に与えてきた芹花の気持ちなんてちっぽけなものだったって思えるくらいに、俺をひたすら愛して欲しい。
他の男なんて目に入らないほど、そして、俺と会えない時でも俺を感じているような、そんな愛し方をして欲しい。
これが、俺の言う『密な距離』っていう付き合い方だ」
そして、怜さんの唇が密に私の唇に重なった。
啄むようなキスを、笑い声と共に楽しんでいた怜さんは、
「もっと、芹花が欲しい」
妖しげな瞳を私に向けて呟くと同時に、ぐっと私の腰を引き寄せた。
一気に深くなったキスを落とされ、差し入れられた舌の動きに驚きながらも。
「怜さん……」
後頭部を抑えられた瞬間の私は、反射的に怜さんの首にしがみついて爪先立ちになる。
熱い喘ぎ声を漏らしながら、自分からもキスを返して気持ちを注いだ。
そっと目を開けると、間近にある熱い瞳。
「目、閉じないのか?」
吐息の合間にくすりと漏れる言葉。
「夢……かも、って……不安で……」
まるで私の望みを全て受け止めてくれるような怜さんの言葉を信じられなくて、今交わしているキスですら夢のようで、不安で目を閉じるのが怖くて。
「怜さんが……いるって、ちゃんと、見ていたいから……」
夢じゃないって確認したくて瞳を閉じられない。