④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 今日は月末、明日からは12月に変わる。

 “ゆっくりでいい” 
 と言われる返事の期限は、それでも2週間が限度。

 すなわち、今日。


「是非、やらせてください!」

 社長室で元気よく告げた後、大神は課のフロアに降りた。

 …これでいい。

 支社長の椅子と、松嶋さんを引き受ける話はセットだ。

 そもそも、社長の意向を『断る』という選択肢など、最初っからなかったのだ。

 恋や結婚、家庭の理想…そんな些事に惑わされて断れば、良くて左遷、悪くて解雇。


 もう二度とは這い上がれない。


 俺は…他の奴等とは違う。


 どこまでも


 登っていけるのだから。
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