④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
大神は、燈子の顔をまじまじと見つめた。
__あーあ、コイツは。
ヒトの気なんか全然知らないで、一体何が嬉しいのか、いつも楽しそうに笑ってやがる。
ホラ今も。
ちっさい口を精一杯開けて、デカすぎる飯に齧りついて、くるくると大きな瞳を動かしながら。
人生舐めてるんかって、最初はイラッとしたもんだけど…
今はその表情(カオ)に、心が疼いてどうしようもない。
もし今。
俺が急に君を抱き締めたなら、一体どんな顔をするんだろう。
真っ赤になって怒るだろうな。イヤ、驚いて逃げ出してしまうかもしれない。
だけどきっと、柔らかくって、温かくって____
「……でね、色んな具が入ってるんですよ。鮭に昆布に…あ、昨日の晩御飯のポテトサラダなんかも!
あれ、課長?オオカミさん?」
「え、あ、ああ。悪い」
気が付けば、大神の手は、燈子の方へ伸びていた。
慌てて手を引っ込めたものの、燈子はオニギリ片手にニヤニヤと笑っている。
そうして、意味深に尋ねた。
「もしかして課長……欲しい?」
「え…」
ドキン。
一瞬、彼に動揺が走った。
もしかして心を見透かされたのだろうか。
「い、いや、別にそういうわけじゃ…や、まあ、欲しくないと言えば嘘になるというか…」
シドロモドロになる大神に、燈子はニッと笑いかけた。
「仕方ないなあ。じゃあ半分だけですよ~」
「へ?…あ、ああ」
そっちかよ!
燈子がイソイソとオニギリを半分にし始めたのを見て、大神は勘違いに気がついた。
フッと自分が可笑しくなった。
あ~あ、俺としたことが。
なんつう未練な_____
彼は、具材の配分に悪戦苦闘している彼女の頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃに撫でてみた。
「わ、何するんですかっ、ちょっと、形が崩れる…」
「よしよし、よーし。よく頑張った。
じゃあ、もっと効果がでるように、これは頂いといてやろう」
「ああ!!」
「じゃあな。
…でも。
あんまり痩せなくていいと思うぞ」
何か喚いている燈子に手を振ると、大神は再び走り始めた。
手に入れたおむすびを一口かじる。
最初で最後の赤野の味は、思ったとおりホワホワした優しい味がする。
が____
あれ、おかしいな。
急に苦くてしょっぱいぞ。
アイツ、塩使いすぎたな。
いや、違う。
ひょっとして
俺、泣いてんのか?____
__あーあ、コイツは。
ヒトの気なんか全然知らないで、一体何が嬉しいのか、いつも楽しそうに笑ってやがる。
ホラ今も。
ちっさい口を精一杯開けて、デカすぎる飯に齧りついて、くるくると大きな瞳を動かしながら。
人生舐めてるんかって、最初はイラッとしたもんだけど…
今はその表情(カオ)に、心が疼いてどうしようもない。
もし今。
俺が急に君を抱き締めたなら、一体どんな顔をするんだろう。
真っ赤になって怒るだろうな。イヤ、驚いて逃げ出してしまうかもしれない。
だけどきっと、柔らかくって、温かくって____
「……でね、色んな具が入ってるんですよ。鮭に昆布に…あ、昨日の晩御飯のポテトサラダなんかも!
あれ、課長?オオカミさん?」
「え、あ、ああ。悪い」
気が付けば、大神の手は、燈子の方へ伸びていた。
慌てて手を引っ込めたものの、燈子はオニギリ片手にニヤニヤと笑っている。
そうして、意味深に尋ねた。
「もしかして課長……欲しい?」
「え…」
ドキン。
一瞬、彼に動揺が走った。
もしかして心を見透かされたのだろうか。
「い、いや、別にそういうわけじゃ…や、まあ、欲しくないと言えば嘘になるというか…」
シドロモドロになる大神に、燈子はニッと笑いかけた。
「仕方ないなあ。じゃあ半分だけですよ~」
「へ?…あ、ああ」
そっちかよ!
燈子がイソイソとオニギリを半分にし始めたのを見て、大神は勘違いに気がついた。
フッと自分が可笑しくなった。
あ~あ、俺としたことが。
なんつう未練な_____
彼は、具材の配分に悪戦苦闘している彼女の頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃに撫でてみた。
「わ、何するんですかっ、ちょっと、形が崩れる…」
「よしよし、よーし。よく頑張った。
じゃあ、もっと効果がでるように、これは頂いといてやろう」
「ああ!!」
「じゃあな。
…でも。
あんまり痩せなくていいと思うぞ」
何か喚いている燈子に手を振ると、大神は再び走り始めた。
手に入れたおむすびを一口かじる。
最初で最後の赤野の味は、思ったとおりホワホワした優しい味がする。
が____
あれ、おかしいな。
急に苦くてしょっぱいぞ。
アイツ、塩使いすぎたな。
いや、違う。
ひょっとして
俺、泣いてんのか?____