④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 午後の業務課オフィス。


「…ですから、こういうことで…進めてよろしいでしょうか?」

「ああ、任せるよ」

「…先日の交渉の経過を…」

「分かった」

 部下が次々と上げてくる報・連・相を生返事で返しながら、大神は先行きに思いを馳せていた。

 部下達は、いつものように怒らない近頃の彼の変貌を喜んでいるようだが、彼の心はいつになく深い闇に沈み込んでいた。


「…ということで、よろしいでしょうか?」

「ああ、構わんよ」

「え?本当に⁉やった~、皆。課長オッケーだって~!」

 ん?

 我に返って顔を上げると、赤野燈子が課員に振り向き、大声で告げているところだった。

 俄に歓声が上がっている。

「おい、ちょっと待て。今、何て言った?」
 
「やだなあ、ボーっとしちゃって。
課の忘年会のことですよ」

 会心の笑みを浮かべ、燈子は告げた。

「アンケートの結果、一泊旅行が多かったので、その案でいこうかと」

「はあぁ?
 テメエ、この忙しい時期に無理に決まってるだろ。

 む・り!」

「ダメですよ~、いいって言いましたもん。ね~、皆」

 課に響いたブーイングに、大神は結局押しきられた。
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