④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 大神はにっと笑った。

「な~んてウソウソ。 
お前が……俺を恐がってるのは知ってるよ」

 燈子の両腕から手を離すと、彼女はふっと脱力した。

「ホラ!」

 大神は燈子の浴衣の襟と裾を直し、ついでにバンバンと埃を払った。

「若い女の子があんまりサービスするな。見てないようで、実は皆見てるんだそ?」

「あ…」

 大神は一歩後ろへ引くと、柔らかな癖毛をそっと撫でた。

「悪かったな、怒ってばかりで。
 次の上司は______
 優しい奴だといいのにな」
 
「大神さ…」

 大神は何か言いたげな燈子に背を向けると、逃げるようにその場を去った。


 

 …あーあ、なんて間の悪い。タラシ失格だな。



 ここに来てやっと

 
 彼女の気持ち


 分かっちゃったかも知んないーー
< 26 / 60 >

この作品をシェア

pagetop