④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 少し間をあけ、大神は気のない返事を返した。

「別に。
 ヤり損ねたのが、惜しかっただけだ。
 俺を好きだなんて言う女は、いっぱいいるし。
 そもそも俺は、もうすぐ結婚して九州行くんだ。
 赤野は…
 調子に乗りやすし、間は抜けてるけど…まあいいコだよ。お前がちゃんと付き合ってやれ」

 熊野は何とか食い下がる。

「嘘だ。お前は本当にあの子のことが大好きなんだ。俺には分かる」
 
「はいはい。
 エスパーですかい?チェリークマたんは」

「おいっ!
 ……大神。
 自信家でナルシストで、恋愛はレジャーだと世間一般に公言するような、誠意の欠片もないヤツがよお」

「ひでえ男だな、どこのどいつだ、それは」

「お前だよっ。
 なあ、お前がいつもあの子の前でどんだけニヤついた顔してたか、分かるか?
 怒鳴って、けなして…些細なコトでもオタついて…
 女の前では絶対に見せない顔を、彼女の前ではいつも晒け出してるんだ。
 そんなお前を見てたらな、俺はもう諦めてもいいかなって、そう思ってたこともある……
 なあ、考えてもみろ?」

 熊野は、大神の鼻先まで顔を寄せた。

「お前、ホントに出来ると思うか?
 公に出て仲の良い家族を演じて、その後夜は、それぞれの場所に帰っていく…
 俺の見立てじゃお前のメンタル、そこまでは強くないぞ?」
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