④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
大神の顔が、みるみるうちに綻んだ。
「よ、よし。いいんだな?間違いないな?」
燈子はもう一度、今度は大きく頷いた。
「そっか…ははっ、いいって…そうか」
「しかし課長。できればその、
もう少し詳しいご説明を…」
だが、聞こえているのかいないのか。
“そうか、イエスか…イエスはいいってことだよな”
大神は惚けた表情のまま、独り言を言っている。
燈子は唖然としてそれを見守った。
__こんなオオカミさん、初めて見たかも知れない。
真っ赤になって、髪を振り乱し、ありありと動揺を見せていた。
と思ったら、今度は無防備に蕩けてしまいそうなニコニコ顔を晒して…
だけど___
少し安心した。
どうやらもう『実はドッキリでした』という心配はなさそうだ____
と、ようやく我に返った彼は、改めて燈子に向き直った。
「そ、その。今すぐキスして押し倒したい気持ちは山々なんだが…」
__ちょっと待て、台詞がおかしい__
突っ込む前に、彼は燈子の両手を握った。併せた彼の掌が、汗で濡れている。
まるで夢を見ているようだ。
眉尻を下げ、困ったような切ない表情で訴えかける今の彼に、いつもの傲岸さはどこにもない。
「生憎始業10分前だし、ここではそうもいかない。
しかもあまりに急ぎすぎて、情けない事に、指輪も準備もないんだ。
…だから」
ガクガクに震える手で、彼は燈子の左手を、自分の顔の近くまで、持ち上げた。
膝を折って目線を合わす。
そして、汗で滑って何度も失敗しながら、何とか自分の小指からシルバーリングを抜きとった。
「取り敢えずはコレで……約束、な?」
彼は燈子の目の前で、不器用に震えながら左手の薬指にそれを捩じ込んだ。
「よ、よし。いいんだな?間違いないな?」
燈子はもう一度、今度は大きく頷いた。
「そっか…ははっ、いいって…そうか」
「しかし課長。できればその、
もう少し詳しいご説明を…」
だが、聞こえているのかいないのか。
“そうか、イエスか…イエスはいいってことだよな”
大神は惚けた表情のまま、独り言を言っている。
燈子は唖然としてそれを見守った。
__こんなオオカミさん、初めて見たかも知れない。
真っ赤になって、髪を振り乱し、ありありと動揺を見せていた。
と思ったら、今度は無防備に蕩けてしまいそうなニコニコ顔を晒して…
だけど___
少し安心した。
どうやらもう『実はドッキリでした』という心配はなさそうだ____
と、ようやく我に返った彼は、改めて燈子に向き直った。
「そ、その。今すぐキスして押し倒したい気持ちは山々なんだが…」
__ちょっと待て、台詞がおかしい__
突っ込む前に、彼は燈子の両手を握った。併せた彼の掌が、汗で濡れている。
まるで夢を見ているようだ。
眉尻を下げ、困ったような切ない表情で訴えかける今の彼に、いつもの傲岸さはどこにもない。
「生憎始業10分前だし、ここではそうもいかない。
しかもあまりに急ぎすぎて、情けない事に、指輪も準備もないんだ。
…だから」
ガクガクに震える手で、彼は燈子の左手を、自分の顔の近くまで、持ち上げた。
膝を折って目線を合わす。
そして、汗で滑って何度も失敗しながら、何とか自分の小指からシルバーリングを抜きとった。
「取り敢えずはコレで……約束、な?」
彼は燈子の目の前で、不器用に震えながら左手の薬指にそれを捩じ込んだ。