④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
「忘れ物は、ないな?」
「はいっ!完璧ですっ」
燈子はピシッと敬礼をした。
燈子にとっては今日が最後の出社、会社の前で皆と別れは済ませてきた。
荷物は先に送ってあるから、さっき貰った大きな花束と手回り品だけを持って、これから二人で北九州まで約6時間、新幹線で新居へと向かう。
大神が腕時計を確かめた時、彼らが乗る博多行の最終便がちょうどホームに入ってきた。
「…行こうか」
ほんの少し緊張気味の彼の声に、燈子はコクンと頷いた。
____________
興奮して、ひとしきりはしゃいでいた燈子だが、一時間もするとトーンダウンしてしまった。
よほど疲れがたまっているのか、横をみると大神は、通路側に身体を傾かせてすでにウトウトし始めている。
プライベートで寝てる課長の隣にいる…ウーム、近頃は不思議なことばかりだ。
長い睫毛が時折ピクッと揺れている。
無防備に眠る彼の姿は、会社の時と全然違って、何だかちょっぴり……
可愛らしい。
自然に顔が弛んでしまう。
ひとしきり眺めた後、燈子はそっと彼の上に、備え付けのフリース毛布を掛けてやった。
__私も寝よう__
フワッと1つ欠伸をし、窓側に凭れようとして、燈子はふと外に目をやった。
山のなかを走っているようだ。
小さく切られた丸い窓に、何も景色は流れない。
ただ、真っ暗な窓の中に、自信のない不安そうな表情を浮かべた自分がいた。
__本当は、ちょっと寂しい気もしている。
一生懸命就活して、勝ち取った都会でのOL生活をまさか3年で辞めるとは思わなかった。
恋人でもなかったオオカミさんとは、二人で過ごした時間なんて数えるほどしかなく、私なんか寧ろ叱られた思い出しかないくらい。
それでも、彼と過ごした毎日が、自分の中で大きく、お互いに離れたくない気持ちが強かったのもあるけど
本音は少し違っている。
離れれば途端にダメになると分かっている。だから一緒に付いていく。
それが本当に正しい選択なのだろうか___
未来への不安。
ともすれば泣き出しそうな自分に言い含めるように語りかけた。
「はいっ!完璧ですっ」
燈子はピシッと敬礼をした。
燈子にとっては今日が最後の出社、会社の前で皆と別れは済ませてきた。
荷物は先に送ってあるから、さっき貰った大きな花束と手回り品だけを持って、これから二人で北九州まで約6時間、新幹線で新居へと向かう。
大神が腕時計を確かめた時、彼らが乗る博多行の最終便がちょうどホームに入ってきた。
「…行こうか」
ほんの少し緊張気味の彼の声に、燈子はコクンと頷いた。
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興奮して、ひとしきりはしゃいでいた燈子だが、一時間もするとトーンダウンしてしまった。
よほど疲れがたまっているのか、横をみると大神は、通路側に身体を傾かせてすでにウトウトし始めている。
プライベートで寝てる課長の隣にいる…ウーム、近頃は不思議なことばかりだ。
長い睫毛が時折ピクッと揺れている。
無防備に眠る彼の姿は、会社の時と全然違って、何だかちょっぴり……
可愛らしい。
自然に顔が弛んでしまう。
ひとしきり眺めた後、燈子はそっと彼の上に、備え付けのフリース毛布を掛けてやった。
__私も寝よう__
フワッと1つ欠伸をし、窓側に凭れようとして、燈子はふと外に目をやった。
山のなかを走っているようだ。
小さく切られた丸い窓に、何も景色は流れない。
ただ、真っ暗な窓の中に、自信のない不安そうな表情を浮かべた自分がいた。
__本当は、ちょっと寂しい気もしている。
一生懸命就活して、勝ち取った都会でのOL生活をまさか3年で辞めるとは思わなかった。
恋人でもなかったオオカミさんとは、二人で過ごした時間なんて数えるほどしかなく、私なんか寧ろ叱られた思い出しかないくらい。
それでも、彼と過ごした毎日が、自分の中で大きく、お互いに離れたくない気持ちが強かったのもあるけど
本音は少し違っている。
離れれば途端にダメになると分かっている。だから一緒に付いていく。
それが本当に正しい選択なのだろうか___
未来への不安。
ともすれば泣き出しそうな自分に言い含めるように語りかけた。