世界から君が消えた
ー 七海 ー
私には、兄がいる。
そして父はある会社の社長、母は弁護士をしている。
兄は、成績は常にトップ、運動も部活に入っているわけではないが、人よりできる。
その上容姿もよく、人懐っこい性格で、どこにいても目立っていた。
父も母も、そんな出来の良い兄を可愛がった。
それに比べて私は、別に悪くはないが特にずば抜けて言い訳でもなく、成績も運動も中途半端。
いつも兄と比べられ、出来損ないの私は、置き去りだ。
家族なのに、私だけがまるで他人の様で、悲しかった。
時々話しても、怒られるのがほとんどだ。
目の前で、2人に学校の話を楽しそうに話す兄が、羨ましかった。
それと同時に、胸が痛んだ。
私の話なんか聞いてはくれない。
第一、話すような楽しい話など生憎、持ち合わせていない。
将来兄は父の会社を継ぎ、時期社長になる。
私は、どうなるのかな…。
この家に自由はない。
いつだって、主導権を握っているのは父で、誰も逆らえない。
誰も私の気持ちを分かってくれない。
部屋に一人でいると余計に孤独を感じ、この家から逃げ出したくなった。