世界から君が消えた
ー 蒼汰 ー
今朝の事、家族の事を話してくれた彼女。
辛いだろうな…。
「怒鳴っちゃったのは、反省してます。でも、比べられるのは嫌だ。」
「んー……、上手くは言えないんだけど、親に何言われても、川村さんは川村さんであって、俺は無理しないでいいと思うよ。いつか、分かってくれるさ。」
なんとか元気づけようと自分なりに考えたんだけど、上手く伝えられない。
彼女の後ろにはショボーンという文字でも見えそうだ。
こんな言葉でいいのだろうか…。
「それに、そんな酷い事されて、怒った事を反省するとか、めっちゃいい子じゃん。俺は好きだよ、そういう子。」
川村さんの頭を撫でた。
それは無意識で、顔が赤くなった彼女を見て、自分のしている事に初めて気付いた。
「…あっ、ごめん!」
サッと手を引っ込める。
何してんだ、俺。
多分顔が赤くなってるだろうと思い、手で口元を隠した。
「いや、いいですよ。何だか安心します。話を聞いてもらって少し元気になれました。」
「そっか、よかった。」
初めて彼女は笑った。
その屈託のない笑顔に、俺まで笑顔になった。
そして、その笑顔が好きだと思った。
守りたいと思った。
(君と…もっと早く出会っていたかった。)
(貴方と…もっと早く出会っていたかった。)
((そうしたら、もっと違った世界が見えてたかもしれない。))