世界から君が消えた



4時間目ぐらいになると、空腹に襲われる。


先生の都合により自習になった為、周りが騒がしいのが唯一の救いだ。



何度も時計を確認し、終わるのを今か今かと待ち侘びる。


なかなか進まない時間に、うんざりしてきた。



「奏太、なんか面白い話して。」

「おい、無茶振りだな。」

俺の隣の席にいる優奈の、前の席にいる二宮 奏太(ニノミヤ カナタ)は顎に手を当て、考える素振りをする。


奏太も俺と優奈の幼なじみで、昔から3人でよく遊んだりしていた。



奏太は身長が高く、178cmもあることから入学当初、バスケ部に勧誘され今も続けている。


人懐っこい性格で、こいつの周りにはいつも人がいた。


癖っ毛の茶色い髪はフワフワしていて、つい触りたくなってしまう。



「あ!面白くはねぇけどさ、知ってるか?川村って人のニュース!」

暫く考えた後、まさかの川村さんのニュースの話題だ。


川村と聞いた瞬間、少しびっくりした。



椅子を俺の机の隣にまで持ってきて、座りながら少し首を傾げる。



「知ってるよ。朝、テレビ付けたらしてたから。」

「あれヤバくね?めっちゃここ近いし。川村って、ここの学校の2年生だろ?」


俺が頷くと、優奈が話に割り込んで来た。


「あれって、自殺なの?」

もしかしたら、何か情報を得れるかもしれない。



「自殺じゃなかったっけ?」

「私は他殺って聞いたよ。それで、遺体は犯人がどこかに隠したって。」

奏太の曖昧な答えに俺の前の席の松本 蘭(マツモト ラン)がそれを否定した。



蘭は小学生の頃に優奈が仲良くなり、今では優奈の1番の親友で、よく一緒にいる。


優奈に比べると背は158cmと平均並み、腰の辺りまである長くて綺麗な黒髪は、先の方だけ少し巻いてあった。



「え、他殺だったら、犯人は捕まってなくね?」

「じゃあ、まだこの辺いるんじゃ…。」

優奈の言葉に皆がゾッとした。


クラスの皆の視線がこちらに向く。



話をしていた者も、本を読んでいた者も、皆が耳を傾けだした。



「いや、もしそうだとして、何で川村さんが殺されたの?あの子、誰かに恨まれるとか、そんな悪そうな子には思えないけど。」

「確かにな。」

あの子が生きてる事を、俺だけが知ってる。


もし他殺なら、あの子が生きてると知った犯人は、きっとまたあの子を狙うだろう。



「考えられるのは、少女を狙った無差別殺人とか?」

蘭はしれっとそんな事を言った。


それを聞いていたクラスの女子がキャーキャー言い出す。



蘭、お前も女子だろ。



誰かに腕を掴まれたと思うと、それは優奈だった。


怖いのかギュっと俺の腕に抱きついている。



優奈が顔を真っ青にしてるのを見て、蘭は例えばね!っと冗談っぽく笑った。



そーいや、優奈は怖い話とかそーいう感じの、小さい頃から苦手だったな。


結構男勝りな性格をしている割に、こういう時、やっぱり女の子なんだなと思う。



「大丈夫だって。」


頭を撫でるとこっちに顔を向ける。

少し涙目になっていた。



そんな中、パンっと音が教室に響く。


「よし、この話はやめにしようぜ!何か暗くてしょうにあわねぇ。」

最初に話を持ちかけて来た奴が何言ってんだか。


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