君はブラックコーヒーを飲めない
「おはよ」
次の日、何故か君は先に起きている。
朝が苦手な君が。
「飲む?」
自分で淹れたらしい、黒い液体の入ったコップを持ち上げて、尋ねる。
私は君の真似をしてみて、小さな声で
「ブラック」
と呟く。
それからしばらくして、君がカップを持ってくる。
その中に入っているのは、柔らかな色をしたブラウン。
一口口にすると、ふわりと甘さが口の中に広がる。
私は、黙って君を見つめる。
君は、泣き笑いにも似た表情を浮かべて、ただ私を見つめる。
それから、たった一言。
「別れよっか」
そう、呟いた。
最後に君がくれたのは、切ないほどに甘い失恋の味。
いつか、彼はカフェオレを飲んで、こう言ってくれるのだろうか。
「好きだったんだ」って。