君はブラックコーヒーを飲めない
あの頃は……
久しぶりに飲んだカフェオレは、酷く甘かった。
君の影響で、ブラックばかり飲んでいた私の舌には、少々辛かった。
あれから、随分と月日が過ぎた。
きっと、君は誰かの前で、コーヒーを飲んでこう言っているのだろう。
「好きだったんだ」
それは、君が好きだった思い出だ。
過ぎ去ってしまった過去の証。
振り返ることは出来ても、戻ることは出来ない。
思い出。
何が、好きだったの。
誰が、好きだったの。
幾つかの問いが、浮かんでは消え。
また消えた。
私は聞かないし、君は何も言わない。
常に私たちの間には、見えない幕が張っていた。
時折、私はどうすれば良かったのか考える。
それから、死ぬほど後悔する。
まだ、君を思い出にするのは、辛いから。