君に遺された恋
妊娠して9カ月のある晩

私が急に消えたら彼がどんな反応をするのか見てみたくて、
クローゼットに隠れて彼の帰りを待ったわ。

エルナー王子は部屋に入るなりキョロキョロと私を探した様子で
その後、ドアをノックした「あいつ」にまで「トリアかい?」と声をかけてた。


私を探してくれている彼の姿が嬉しかった。


だけどそんな感情は一瞬で悲劇に変わる。
魔女が王子を襲うところ。私は目の前でその惨劇を見ていたの。


激しく交わる私の「旦那」とシャーラを見ていて私は崩壊した。


1度だって彼はあんな風に私を求めたこと無かった。


クローゼットの中で声を殺して泣き明かし、
ショックからか深夜、早すぎる陣痛が私を襲った。


浮気現場の部屋から這い出て、
廊下で、「旦那」ではなく「使用人」に立ち会われて出産するなんて。


人生最大の屈辱よ。


私は嫉妬心が抑えられなくて、当時庭掃除の使用人だったアイビーに、
彼の姉、ルイスを呼んでくるよう命じた。


エルナー王子からシャーラの記憶を消すようにお願いした事は言うまでも無いわよね。
< 119 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop