君に遺された恋
父様の部屋を出て自室へ戻る最中、
僕は城を抜け出す方法を考えていた。

正面の門には警備が居る。
庭にも廊下にも使用人がいる…っと!

「きゃっ…!!」

僕は廊下で掃除をしていた使用人アルにぶつかり
バケツの水をかぶってしまった…

ぶつかった拍子に転けそうになった彼女を後ろから抱きとめると
彼女がびしゃびしゃになった僕を見て取り乱す。

「うわぁあああ!」

「このくらい大丈夫だよ。」

「すみませんっ。すぐ着替えをお持ちします!!」

取り乱した彼女は、僕を近くにあった部屋に手を引いて誘導したかと思うと
すぐさま部屋を飛び出して着替えを取りに行ってくれた。


父様に殴られたところがジンジンと痛んでいたはずが
バケツの水で少し冷やされたようで気持ち良い。


ミラが触れた僕のシャツのボタン…
そっと手を当ててミラを思い出そうとした。

ミラの香り・声・温もり…

どうしてこんなに愛おしくなってしまったんだろう。
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