君に遺された恋
そこに居るはずもない、見えるわけもないのに
僕はミラの事を思って窓の外に目をやった。


不意に窓に映る自分の姿にドキッとする。


この体をミラが見たらどう思うだろう。
そう、そっとシャツを脱いだ時
運悪くアルが部屋に帰ってきてしまった…

コンコン
「アルです。着替えをお持ちしました。」

ガチャ

しまった…鍵をかけ忘れた…
「あ、アル!駄目だ…!今入らないで!」
と、焦ったところでもう遅い。

アルが呆然と立ち尽くし
「そ、それは…」
と、小さく震える声で言った。


王がやったなんて言えるわけない。
僕は言葉を選びながら口を開いた。

「アル?びっくりさせたね。これ、内緒にしててくれないかな?」

「誰が…そんなひどいこと…」

「ごめん。アル。それは言えない…
でも大丈夫だから…そんな顔しないで?」

僕は平静を装い彼女の顔をのぞきこんだ。


「ひどい…」


彼女がぽつりとそう言って僕を抱きしめる。
どうしてそんなことをするのか、僕にはよく分からなかった。
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