君に遺された恋
計画を実行する朝。

私はできるだけ多くの使用人に
「手が空いているなら王様を見送りに、正面の門まで出ましょう。」と、呼びかけた。

よし…今なら外も落ち着いている。

コンコン
「アルです。レグルス様…」
ガチャ

「準備はよろしいですか?」

「あぁ、万全だよ。」

「それでは計画どおりに…」

私はアイビーの服を着て深々と帽子をかぶったレグルス様を誘導して
使用人通用口へと導いた。

「案外簡単に出られたね。」

レグルス様の笑顔…
こんな風に見たかったんじゃないのに…

気持ちを伝えたい…
伝えるなら…今…?

そんなことを考えているとレグルス様が口を開く。

「アル、僕のためにありがとう。
迷惑をかけるけど、後のことはよろしくね。」


あぁ、またタイミングを逃した。


「お気をつけて。」

そう言うのが精一杯。

小さく消えていく彼の後ろ姿を見送って、
振り返れ、振り返れと念じた。

だけどレグルス様の意志は固かったのか、
一度も振り返ることなく、「私の愛しい人」は見えなくなった。


お願い…涙。出るな。
悲しくなるだけだから。
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