君に遺された恋
廊下に出るとお茶を運ぶ使用人イリスを発見した。
私は早速、レグルス様に会いに来た客人を追い返そうと作戦を実行する。

「ねぇイリス!」

「あ、はい」

「レグルス様、体調を崩されているので部屋には…」

私が言い終わらない内にイリスが言葉を遮る。

「それならちょうど良かった!」

「?」

「ジオラス様がお見えなの!」

ジオラス…!?
ジオラスはこの城の主治医。
いよいよまずい

「今呼んでくるわね!」

「ま、待って…!」

「?」

「今誰にも会いたくないみたいなの…」

そう言うのが精一杯。
イリスがふふっと笑って答える


「なーに言ってるの!ジオラス様だよ?レグルス様も絶対喜ぶ!」


そんなの知ってる…
エルナー王が昔、魔女に襲われて3年間も目を覚まさずに居た頃
王様を支え続けた医師だもの…
目を覚まさないエルナー王に代わりレグルス様を息子のように可愛がっていたジオラス。
レグルス様も、父親同然にお慕いしていて…会いたくない訳なんかない。

だけど…

私はパタパタとジオラスを呼びに行くイリスの後ろ姿を
ただただ何も言えずに見守る事しかできなかった。
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