君に遺された恋
「やっと目ぇ覚ましたか…」


ベッドで目を覚ますと、私の顔を呆れたような表情で上から覗き込むジオラス先生


「私…は…?」

全身がズキンと痛む。
状況がつかめない。

「トリア様、君の家族、俺を過労死させたいの?!」

「…?」

「君は窓から飛び降りてたんだよ。」

「…え?」

「お前ほんといい加減にしろよ
無くなって良い命なんてひとつもねぇんだからな!!」

先生が怒鳴る。

どうやら私は窓から飛び降りて死のうとしてたらしい。
ここは3階。死んでいてもおかしくなかったけど…


先生が私の頭に手を乗せて顔を覗き込む

「まだ20歳とはいえ、トリア様は女で、母親だ。
エルナー王子を支えて、
あの赤ん坊を育てなきゃなんねぇのに何甘えてんの?
死ぬなんて生きるよりずっと簡単なんだよ。
自分の命大事にしねぇ人間なんて大嫌いだ。」

ポロポロ涙がこぼれる…

「ごめんっ…なさい…私…っ」


するとその時どこからか赤ん坊の泣く声がする。


「ほら、母親が泣くと子供も泣くんだよ。」

そう言って先生が部屋を出て、
レグルスを抱えて私の部屋に連れてきてくれた。

生んでから初めて見るレグルス…

私の可愛い子供。


大切な小さな命。


「良かったな。子供もお前も無事で。」


先生が私の胸の上にレグルスを乗せる。


「これが幸せの重さだ。
今はまだ軽いけど、すぐに抱えきれないほど重たくなる。
この子の為にも、自分の幸せの為にもしっかり生きろよ。」

< 153 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop