君に遺された恋
「ジオラス先生…?」

診察中の先生に後ろから声をかける。

「はーい?」

「先生と…結婚したかった。」

「はぁ?!」

「エルナー様と結婚してなかったら先生と結婚したかった。」

「こら!そんな事言うな!
ちゃんと旦那さんを大切にしなさい。おこちゃまトリア様!」

そういって先生が私の頭を小突く。
私はそこにエルナー様が寝ている事も承知の上で先生に抱きつく。


困ったことに、自分の気持ちに気付いたら制御が効かない。
目の前でエルナー様の浮気現場を見ていたからかしら。
仕返ししたいわけじゃ無いけど、
エルナー様がやってたんなら私だって少しくらい浮気しても良いと
身勝手に判断している自分がいた。


「今だけで良いです。私を見て欲しいです。」

「どこか具合が悪いの?」

「そうじゃなくて…」


先生はフーッとため息をついて私を引き離す。


「だーめ。大切な患者さん達の幸せを壊したくない。
昨日は狂わせるような事言って悪かったよ。」
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