君に遺された恋
数日経ったある日、いつものようにエルナー様の診察を終えて
帰ろうとするジオラス先生を自室に招き入れた。

「トリア様、呼び出すなんてどうしたんだ?やっぱどっか具合悪…」

私は先生の言葉を遮るように手を握り勇気を振り絞る。


「先生…私に恋愛を教えてください。」

「は?!」

「どうしても知りたい。
愛される人の気持ちも、愛する人の気持ちも。」

「いや、君にはエルナー様が…」

「彼とはこの先恋愛できるかなんて分からない。
もしかしたらこのまま目が覚めないかもしれないし、
彼は気を失う前まで他の人を愛してた。」

「だけど…」

「先生。私、まだ20歳だよ?
このまま愛されないで終わる人生なんて嫌だ。
エルナー様の目が覚めるまででいい。
私に恋愛を教えてください。」


先生は戸惑いながら私を見つめる。

「引き返すなら今だよトリア。」

「いいえ、引き返さないわ。
あなたの「恋人」になりたい。
先生。一人の女として私を見て?」

「悪い人だなぁ…」

と、先生はため息をつくと部屋の鍵をしめた。
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