君に遺された恋
「アイビー。ありがとう。」


そう言って微笑み、私は使用人部屋へ向かった。
花を小さな花瓶にさし、私は涙でくずれた顔を洗った。


「よしっ。」


気持ちを持ち直し、ふーっとため息をついて胸に手を当てた。


「奇跡が起きますように。」


そうつぶやいて部屋を出ると辺りが騒がしい。

「おーいアル!大丈夫?」
ベルが走ってこっちに来る。

「ベルごめんね。もう大丈夫。それより…騒がしくない?」

「王様が帰ってきたんだ!さっき門の所ですれ違ってさ!」

「へ?!今晩じゃ無かったの?!」

「なんか公務が早く終わったらしくて…早く掃除終わらせないと!」


私達は急いで持ち場へ向かう。
私は使用人歴が長いので、王様の部屋や応接室のあるフロアの廊下。
ベルはまだ新人だから中庭の周りを担当している。
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