君に遺された恋
トロンとした幸せそうな目でミラが僕を見つめているかと思うと、
彼女は少しの間をおいて急に吹き出して笑った。


「あっははっおっかしー!レグルスやっぱり変だ!好きなのは、このクッキーでしょ?」


「ふぇ?!」


ここにきて、前言撤回?
いやいや、もう引き下がれない。

絡められた指を今度はしっかり握り返し、僕は勇気を振り絞った。


「ミラ。僕は君が好きだ。」


愛しさを言葉に込めて、ミラを一生懸命見つめる。
そして僕は握られた手を引き寄せてミラの指にキスをした。


これ以上の愛し方が分からない。


この城の中で恋をする事なんてないから、ミラが初めて好きになった人だ。
大事にしたい。触れたい。
柔らかい君の肌は触ると壊れそうで、どうしたらいいのかわからない。


ミラはしばらくキョトンとしていたけど、
僕がしたように絡めた指を自分の方へ引き寄せ、僕の指に優しくキスをした。


「私もよ。レグルス…やっと言えた。」
< 8 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop