君に遺された恋
「やっと目が覚めた?…」

「…?!誰?!」


私はとっさに手近にあったブランケットで体を隠し辺りを見回した。


ドアの近くに知らない女が居る。

トリアでも使用人でもない。


「昨晩は結ばれて良かったわね。」

「っ…だから…誰?」

「ふふっ悪いことはしないわ。」

そう言うとその女は、まだ寝ているエルナーの側に寄り顔を覗き込んだ。

「ちょっと量が少ないかもしれないけど…まぁこれくらいならいけるわ。」


「楽にしてあげるわね。」


ペロッ

「?!」


その女はエルナーの目尻にほんの少したまった涙を舐め、目をつむった。


「あなた…まさか魔女…?!」

「えへへ、正解!」




「今、彼からあなたの記憶を消したわ。」




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