強引同期と偽装結婚することになりました
「分かってる。葵が俺の願いを叶えてくれようと思っていること。でも、俺は葵の願いを叶えてやってない」


「叶えてくれたよ。優木くんはたくさん叶えてくれた。私がここにこうしていられるのは優木くんがいてくれたからなんだよ?だから・・・」


「俺、結婚のこと何も考えてなかった。プロポーズも指輪も勢いで全部、決めたのは俺。葵に相談もせずに結婚式場も決めて、葵の意見を聞くこともしなかった」


「だって、それは時間がなかったから。優木くんが決めてくれなきゃ30日なんて間に合わなかったよ」


一生懸命、頭で考えながら言葉を紡ぐ。優木くんに言わせてしまった言葉を何とか訂正してもらうために。

でも、一度決めたことを曲げない優木くんに私のとってつけたような言葉なんて響くはずがない。


「葵、言い出せなかったんだよな?本当は二人で結婚式を作りたいって」


「・・・ごめん」


優しく、優木くんが抱きしめてくれる。ごめん、ごめんなさい。そう言って私はただ、彼の腕の中で泣くことしかできない。


優木くんと気持ちが通じ合って、お互いがお互いのことを好きだとわかったときから、結婚式に抱いていた理想を少しずつ思い出している自分がいた。

でも、そんなお金もないし、時間もない。それなのに、好きな人との結婚だから美由紀ちゃんの結婚式のような素敵な結婚式がしたいと心の片隅にそんな気持ちが貼り付いていた。
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