強引同期と偽装結婚することになりました
料理が運ばれてきて、二人で談笑しながら食べた。来る時はいろいろ覚悟してきたのにいざ優木くんのことをあっさり諦めたと聞くと、なんだかもっと彼女と仲良くなりたくて私から話を振った。

第一印象で決めるのは良くないけれど、苦手意識をお互い持っていたことも分かったし、仕事もプライベートの話もして、すごく楽しい時間を過ごせた。


「葵さんを泣かせないでくださいって言われた。まさか一番、言われるはずのないやつからそんな風に言われて戸惑ったよ」


「あはは。美夏ちゃん、そんなこと言ったんだ」


お互い、これからは企画のライバルだけれど女友達にもなろうと彼女は私を葵さんと、私は彼女を美夏ちゃんと呼ぶことにした。

職場で初めて女の子と携帯番号を交換出来て嬉しかったな。


「美夏ちゃんってもうそんなに親しくなったのか。女って分からないな。俺なら柳と絶対にそこまで親しくはなりたくない」


「柳くんと美夏ちゃんは違うよ。柳くんは、私も苦手だな」


「でも、そんな苦手なやつも葵は親しくなれるから、少し心配だけどな」


心配？と聞き直したとき、停まっていたバスが動き始めた。平日の10時代はご老人が多く、バスの座席はすぐに埋まった。
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