強引同期と偽装結婚することになりました
「だからね、体験させてやったの。実はね、うちの会社にも託児所が併設されているのよ。それで研修の一環と題して一日保育士。さすがにおっさんは無理だから若手社員にね。そしたらみんな子育ての大変さがわかったらしく賛同」


「部長、おっさんはダメです。おじさんです」


「まあ。それはともかく、優木さん。共催させていただくにあたって何個か条件を出させていただいてもよろしいですか?」


さっきまでざっくばらんのトークタイムだった空気が一転。急に営業モード。さすが、部長なだけあって切り替えが早い。


「まず、ツアーの日程なんですが、9月25日にして頂きたいんです。この日はマスコミ向けのプレオープンの日。ここで託児所の宣伝をしたいんです。そこであなたの企画ツアーを使用したい」


「ツアーをテレビで取り上げてもらうということですか?」


「そう。だから定員は10名くらいが無難かな。後、いろいろ提案されていたけど、せっかくママの時間なんだし、ツアーはフリータイムのほうがいいと思います」


「フリータイムですか?でそれならツアーにする意味が」

「いろいろ縛られるとママも赤ちゃんも大変だと思うの。特に母乳のお母さんなんてね。だからその分、コストを安くするんです。十分なツアーですよ。子育てママにとって、移動で気を遣う必要もない、授乳もバスの中で出来て、一人で温泉を満喫できる。そんなツアー、今までなかったと思います。自信持ってください。成功させましょうね」


横山部長が立ち上がり、松永さんが続く。私もすぐに立ち上がり、よろしくお願いしますと握手を交わした。
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