現実世界で捕まえて

「僕は土屋さんの命の恩人です」

「はっ?」
思いきりマヌケを出して西上係長を見てしまう。

「だから僕の命令を聞いてもらいます」

「どうしてですか?」

「それが必然でしょう。だって僕が君の命を助けた」

今までに見た事がないくらい
西上係長は楽しそうな顔をしている。

「命令って何ですか?」
逆に私の頭はパニくってます。
ワケわからないんですけど。

「僕と付き合いなさい」

「えーーーっ?」

もう、驚きの声しか出ない。

「僕と付き合いなさい。変な男に引っ掛かるよりいいでしょう」

「言ってる意味が通じてません」

「あなたやっぱりバカですね」

「バカって……」

「遅刻しますよ」

どうしてそんなに普通に言うの?
てか付き合うって何?そんなにサラッという?
戸惑って立ちすくむ私を無視して係長は歩き出すから、私は慌てて後を走って追いかける。

「ちょっと待って下さい」

「僕の頭に『待つ』という言葉はありません。それから残業はしないように。一緒に帰れないから」

「私の意見も聞いて下さいよ」

「僕はあなたの命の恩人なんですよ」

付き合って当たり前って感じで係長はそう言った。

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