現実世界で捕まえて

「では決定。付き合いましょう」
その当然って態度が憎いわ。
こんな大切な話を事務的に終わらせないでよ。

「あの、話が進み過ぎます。ちょっと落ち着いて話しましょう」

「もう話は終わりました」

「終わってないです」

「うるさい唇ですね」

キスされた。

誰もが足早に向かう駅の入口でキスされた。

追いかける私の腕をクイッと引っ張り
自分の動きを止めて
西上係長は通勤途中の風景に、自然に混ざるようなキスをした。

どうして私は怒らないのだろう。

西上係長とのキスは
思い出せないけど
どこか懐かしいような
待っていたような不思議な気持ちになっている。

「これから溺愛するので、気を付けるように」

はい?溺愛?ドSで溺愛?

「返事は?」
強く言われてつい「はい」って返事をしてしまった。

しまった!

ヤバいって顔をした私を見て
西上係長は「契約成立」って喜んだ。

契約成立?
いやいや。いや、あの。

「これからもよろしく」

「これからも?って、会社以外って話ですか?」

「あー、そーゆー意味にもとれたか」

別の意味があるの?







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