現実世界で捕まえて

小1時間ほどの残業を終わらせ
イスの背もたれにググッと身体を押しつけて伸びをする。

今日はみんな早く帰ってしまった。
女子の残業は私だけ。
平野課長も直帰。
頭ポンポンを思い出してニヤニヤしちゃう不気味な私。

ラストはパソコンとにらめっこだったので、背中が強張ってしまった。

『土屋さんすいません。数字が合わないんです』
申し訳なさそうに後輩がそう言った。

そんな申し訳なさそうな顔をして
本当は私を利用してるんでしょう。
なんでも『いいよ』って返事する、人の良い使いやすいヤツだもんね。

なーんて
昼に聞いた陰口を言ってやろうかと思ったけれど、言ってどーする?だよね。

あと半年の命だから
何て言えばいいのか
逆に心が広くなって、どーでもいいやーって気持ちになってしまい、後輩のお願いを聞いて残業。

人が良すぎるか?
パソコンをシャットアウトして机の上を片付けると、机の上に出していたスマホが振動する。

誰かと思えば死神だった。

【夕食はビーフシチュー】

LINE交換しましたっけ?
アイコンが血塗られたカマって何?
ビーフシチューって……死神さん……楽しんでない?

色んな疑問を感じながらも
私は残っていた数名の営業の人に『お先に』って挨拶をして会社を後にした。


そして

コンビニを3件周り

80万ほどお札を集め

老舗デパートに乗り込んだ。

< 25 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop