現実世界で捕まえて
80万って財布に入らない。
そんな庶民な感想を持ち、有名ブランドのジュエリーショップの前に立ってガラスケースを見つめる。
キラキラしてる。
宝石がいっぱい。
そんなに宝石に執着してるタイプではない。
ファッションリングも着けてない。
石の種類もよくわからないけど、ここに来た理由とは……。
高価な宝石が輝くその奥に、綺麗なショップのお姉さん達が3人で立ち話をしている。
私はショーケースを覗く
覗いているけど誰も応対しない。
ショップでは話しかけてもらいたくないタイプなので、そっとしておいてもらってありがたいけど、チラ見してからのまた立ち話はないんじゃない?
先月もこんな感じ。
たまたま妹の誕生日が近くて
妹ここのブランドが好きだから、小さなピンキーリングでも奮発して買ってあげようかと思い、お店に来たはいいけど……店員さんの扱いは軽かった。
綺麗だけどプライド高そうな店員さんが並んでて
私の応対より別のマダムの方が大切だったようで、気分を悪くして買わずに帰ってしまった。
そして今日、また私はショーケースの前に立つけれど誰も相手をしてくれない。
「すいません」
声を出すとやっと茶髪の髪も艶やかなお姉さんがやって来た。
「いらっしゃいませ」
さっきから気付いていたけど、今気付きました……そんな笑顔だった。
「指輪を見せてもらえますか?」
さりげなくそう言うと、店員さんは愛想笑いを浮かべてキーを取り出しショーケースを開いた。
「来週からセールが始まりますので、お買い得ですよ。お客様にはこちらなどいかがでしょうか」
あぁ疲れた。早く帰りたい。冷やかしの客の相手なんてしたくないーって……心の声が聞こえるよ。
私も死神さんみたいに心が読めるようになったかしら。
「ローンも組めますが、お値段が高いので無理をさせてはいけないので、こちらの3万円台のはいかがですか?粒は小さいけど質はよろしいです」
「この50万のエメラルドを見せて下さい」
「えっ?」
店員さんは驚いて素に戻る。