現実世界で捕まえて


彼の言う通り
チャーハンも杏仁豆腐も完璧に美味しかった。

こんな店があるなんて知らなかったよ。
今度桜子ちゃんに教えてあげよう。

「少し元気になりました?」

食後のジャスミン茶を口にして死神が聞く。

「はい。ありがとうございます」
素直に私は礼を言い、テーブル越しに頭を下げる。

気をつかってくれたんだね。ありがとう。

「噂にはなってたの。平野課長が本社の常務のお嬢さんとお見合いするって、でも噂だからウソかもしれないし……って、どこかで思ってたんだけど、今日はそれが事実ってわかって落ち込んでしまって」
へへへと自虐的に笑うけど、死神の目は笑わない。

さすが死神 冷たい目がお似合いです。

「……くだらない」

小声で言うならもっと小さくつぶやきなさいよ。
しっかり聞こえてますから。

「私にとっては、くだらなくない問題です」

「では2つ目のお願いはその男にしましょうか?」

「いやちょっと待って。それは簡単過ぎるでしょう。人の心を勝手に動かしてはダメです」

「余裕ですね」

「そーゆーんじゃないんだけど」

「僕にはわかりません」

「でしょうね」

彼の頭の中はシンプルなのでしょうね。

逆にうらやましい。

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