現実世界で捕まえて

パトカーがサイレン鳴らしてやってきた。
警察官が素早く車から降りて、増えてきた見物人を整理し始めた。

交番が近くてよかった。
すぐ誰か報告してくれたんだ。

「俺は金の力に負けた。死んでやる!」
ヤケくそになって叫ぶ男はさっきより動きが激しい。
屋上の柵を乗り越えギリギリまで足を運んでいて、いつ落ちても不思議じゃない雰囲気だ。

遠くでしか見えないけど
まだ若いよ。30代に見える。

本当は死にたくないんでしょう。まだ迷ってるんでしょう。
迷うなら死んじゃダメ。

「早く落ちろー」「早く死ねー」
心ない若者の声が近くで聞こえ、怖い顔した警察官が若者を怒鳴りつける。

そんな声が聞こえたのか、屋上の男は片足を一歩踏み出しもう落ちる寸前だ。

「死神さん。助けてあげて」

「はぁ?またバカな事を」

「私の2つ目のお願いにして。あの人を助けて」
必死で訴えるけど
呆れ顔で目をそらされてしまった。

「お願いです。助けて下さい」
目の前で人が死ぬのは嫌。

私の願いが本気と知り、死神は深く溜め息をついてから「天に向かってお願いして下さい」って前と同じ事を言うから、私は手を合わせて夜空に向かって心からお願いをする。

「神様お願いします。私の2つ目のお願いです。あの人を助けて下さい。今の問題を解決して、家族と笑って過ごせますように。生き延びたら生まれ変わったようにいい人になって家族を大切にして、常に前向きに頑張りますように」

お願いが長かった?
関連性があるからオッケー?

すると
遠くから澄んだ鐘の音が聞こえた。

承認されたか?




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