現実世界で捕まえて

聞き間違いだよね。
死神って言った?

「聞き間違いじゃありません。僕は死神」

「どうして私の心が読めるの?」

「死神だからです。あなた思ったよりバカでしょう?」

ドヤ顔の上から目線で言われてしまった。

「なっ、何かのいたずら?あっわかった。素人を引っかける新しいドッキリ企画?」

どこかにカメラがあるはず
私はあちこち見渡しカメラを探す。
どっかのテレビ局?1人暮らし女子を狙ってイケメンを部屋に入れ、驚く様子を撮影する。
大家さんが全面協力してるのかな?
いやこれ困るんですけど。訴えてもいいレベルだよ。
どんだけお金もらったんだ大家さん。

ベストアングルの洗濯物の山に手を突っ込んでも何も出て来ない。
テレビの横?写真たての近く?カメラどこ?

挙動不審な私の顔にブラが飛んでくる。

「ドッキリ企画ではありません」

「人の心を読まないでよ。メンタリストの人?」

「だから死神だって言ってるでしょう」

怒ったような男の声と共に、窓の外で雷鳴が響き稲妻が走った。

ぎゃー誰か助けて!

「いいかげんに人の話を聞きなさい。こっちも仕事なんだから」

男はもう一度指をパチリと鳴らして立ち上がり、冷蔵庫の扉を開く。

私はまた身動き取れない金縛り状態で正座。

「安い発泡酒しかない」

悪かったね。

男はテーブルを挟んで私の前に座り、2本の発泡酒のプルタブを開けてその場に置いた。


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