現実世界で捕まえて
とりあえず
どこかに入って落ち着こうと思うと、目の前に死神登場。
「どうしました?」
しれっとして
そんな質問するか?
「歩くの速いんですね」
「それは、すいませんでした」
言葉だけの謝りは、さすが死神だ。
戻って来てくれたのが嬉しいのか、ツンデレっぽいのが可笑しいのか、自分でもよくわからないけど笑ってしまう。
「その笑いはなんでしょう」
嫌な顔がまた楽しい。
「なんでもありません。さぁレンタル屋さんに行きましょう」
「ベタな恋愛モノは借りませんよ」
「えっ?身分違いの純愛の泣ける話を借りようと思ってたのに」
「一番嫌いなパターンを言いますね」
そんな会話をしながら一緒に歩く。
彼の歩く速さは私のペースに合わせてゆっくりだ。
「さっき怒ってた?」
「……別に……」
声のトーンが低くなる。
「黙ってられなくて。でもあれって私がお願いしなくても、駆けつけていた奥さんはあの場で叫んで、あの旦那さんは助かって……」
「あなたがお願いしなければ、あの男は飛び降りて即死です」
迷いもなくキッパリ彼はそう言った。
そうか
やっぱりそうなのか。