現実世界で捕まえて

次の店もお洒落で雰囲気の良いお店だった。
顔が広いんだね。素敵。

そこでも会話は途切れなく続き、12時前に私達は店を出る。

冬の空の下
繋がれた手が温かい。
マンションの前まで送ってもらい、帰り際の一瞬の隙。
私の頬に
課長は軽くキスをした。

「次は唇を狙う」
照れた笑顔でそう言い「また明日」って走って行ってしまった。


夢のような夜。

何度も心の中で大きく『ヤッター』って叫んで部屋に戻ると

「おかえりなさい」
パソコン作業中の死神は、私の顔を見ず声をかける。

「ただいまです」
気分上々。幸せ満喫。浮かれてるけど……何か嫌味を言われそう。
いつも絶対アリだよね。
私を否定するのが得意だよね。
さぁどっからでも突き落としていいよ。
今の私は最強です。絶対負けません。
恋する乙女は強いのよ。

戦隊ヒーロー気分で敵からの攻撃を身構えてたけど、死神はペットボトルの水を飲みながらパソコンに夢中。

「お仕事?」
気の抜けた声で私が聞くと

「そうです。緊急に動く用件があって、それの許可を今夜中にもらわないと明日動けないので、これだけ作成して今夜中に提出しないと」

忙しそうな返事が返る。

大変そうね。

「では先に寝ます」
嫌味を言われる前に言葉を残し、平野課長の余韻を味わいたくて部屋に引きこもった。

頬にキスされちゃった。

次は唇だって。

「いやん」
嬉し恥ずかしです。


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