現実世界で捕まえて
私は気を取り直し、深呼吸などしてから経理を見る。
チラ見して、二度見して
かーらーのガン見!
間違いない。
紺のスーツを着てデスクに座ってるのは死神だ。
私は確認の為、お茶を配りに経理に歩き出す。
1人増えた経理チームは、昨日までの平和さはない。
黒い暗雲がドーム状にチームを包んでいる感じ。
死神が加入するとそうなるのね。
彼にお茶を配ると
普通に「どうも」と言われ、そのまましれっと仕事をしていた。
頭パニック。
お茶を配り終わってから、桜子ちゃんに『それで?』ってキラキラした目で聞かれたけど、もう頭が混乱して『昼に話す』って自分の席に逃げ込んだ。
まずは、説明してもらおう。
1時間ほどタイミングを計りながら、私は意を決して経理に向かって歩き出し、死神の前まで行くと彼は電話中だった。
「ええ、わかってます……そちらがそのつもりなら、こっちも考えさせていただきます」
死神はちょっと私の方を向いて、軽く手を上げた。
待ってて……って意味らしい。
「別にいいんですよ。銀行はそちらだけじゃないんですから」
怖いっ。声が怖いっ。
そして脅してる。
この人、銀行を脅してるっ。
「土屋さんすいません。3年前の入金の件ですね。申し訳ありませんが、一緒に資料室までいいですか?」
死神は私に笑顔を見せてから、スッと立ち上がって資料室に向かって歩き出す。
私は慌てて後を追った。